村のかじや
♫ しばしもやすまず つちうつひびき ♪
枠内は1912年(大正元年)「尋常小学唱歌(四)」発表当時の歌詞です。
村のかじや 作詞・作曲:不詳
1
しばしも休まず 槌うつ響き
飛びちる火花よ はしる湯玉
ふいごの風さえ 息をもつがず
仕事にせい出す 村のかじ屋
2
あるじは名高い 働きものよ
早起き早寝の やまい知らず
永年きたえた じまんの腕で
うち出す鋤鍬 心こもる
(昭和22年改訂版)
1912年(大正元年)12月「尋常小学唱歌(四)」で発表されました。
しかし1942年(昭和17年)の「初等科音楽(二)」に収録の際には、平和を歌う三番以降の歌詞が戦時下には不適当として教科書から削除されました。1947年(昭和22年)には題名の「村の鍛冶屋」の「鍛冶屋」部分が平仮名表記になり、「刃物」が「鋤鍬(すきくわ)」と変更されるなどその時代によって改変されてきました。
以下に原詩を掲載しておきます。
村の鍛冶屋
1
暫時(しばし)も止まずに 槌うつ響
飛び散る火の花 はしる湯玉
鞴(ふいご)の風さえ 息をもつがず
仕事に精出す 村の鍛冶屋
2
あるじは名高き いっこく老爺(おやじ)
早起早寝の 病知らず
鉄より堅(かた)しと 誇れる腕に
勝りて堅きは 彼が心
3
刀(かたな)はうたねど 大鎌小鎌
馬鍬(まぐわ)に作鍬 鋤(すき)よ鉈(なた)よ
平和の打ち物 休まずうちて
日毎に戦う 懶惰(らんだ)の敵と
4
稼ぐにおいつく 貧乏なくて
名物鍛冶屋は 日々に繁昌
あたりに類なき 仕事のほまれ
槌うつ響に まして高し
暫時(しばし)⇒ ちょっとのあいだ・しばらく
湯玉(ゆだま)⇒ 湯が煮えたつ時、表面にわきあがる泡・玉のように飛び散る熱湯。
鞴(ふいご)⇒ 主に鍛冶現場で使われていた、手動式の送風機。
いっこく ⇒ 頑固(がんこ)で人の意見を聞かない・強情。
懶惰(らんだ)⇒ なまけて、仕事などをなおざりにすること。
現在の若い人には、「鍛冶屋」と言っても分からない人が多いでしょう。それどころか、鍬(くわ)、鋤(すき)、鉈(なた)、といった農具さえ分からない人も多いと思います。